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鬼の涙は血飛沫となって、白を染める
始まりは黒を覆い隠した白闇の世界。
嫌いな色。自分には似合わない色。正反対な色。
それに馴染むように、塗り潰されるように、伸ばした手。
重みがある温もりと笑顔が、紅眼を染めた。
そして、少女も男の不器用な暖色に包まれた──そう、全ての始まりは吹雪の夜だった。
白と、青と、紅と、黒。混ぜた所で、馴染む筈もない四色。
それでも色を作ろうと必死に混ざり、絡み合い、幾つもの夜を明かした。
純粋な黒には空に限りなく似た青を、穢れた白には鮮血を彷彿させる紅を──重ね、描いて、過去と言う名の枚数を増やしていく。未来を成長させるように。
それはやがて絆となり、思い出となり、枷となり──人生の色を見るに耐えないものとした。
だけど、必死に。自分色に塗り潰そうと足掻く。寒色を暖色に、塗り替えたくて。
毎日の如く筆を進める寒色に、彼は苦悩した。混ざろうと、馴染もうとしてくる暖色に鬱陶しさを感じる日も屡々ある。
そして、また雪が降った。初雪を観測してから、そう日も空けずに吹雪となり、紅眼に白を塗りたくった。
彼女はもう、傍にはいないのに──また、だ。
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