さらに、王子様にはお姫様がいるのです。

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 いや、分かってなかったから、あのペンションを買い戻そうなんて本気で考えてたわけで、でもそんなお金は簡単には手に出来ないって気がついて……。  なのに、ここで由人さんに会ってしまったものだから、心の整理がとっ散らかったみたい。 「あ……」  彼女に捨てられたかすみ草。彼女が薔薇なら私はこれなんだろう。  好きなんだけどなぁ、かすみ草。  可哀想なかすみ草を拾ったけれど、もう生けるのはやめた。 「花屋さん、呼ばなきゃ」  オンシジュームや胡蝶蘭なら、彼女も気に入るかな? それともカサブランカ?  そして、この可哀想なかすみ草は更衣室にでも飾っておこう。 『雨宮、来い』  インカムから聞こえる白井マネージャーの声に「はい」と答えて、その後すぐに花屋に電話した。 「申し訳ありません、わたくし、ホワイトガーデンホテルの雨宮と申します。担当の……」  さあ、まだまだ働かなくちゃ。
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