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チョコレートより
世の中の恋人向けのイベントというやつにそれほどの興味が無いのは、多分俺も蘇芳も一緒だ。
恋人と呼ばれる関係になって、クリスマスにチキンを食べた覚えもなければ正月も年末に実家に顔を出した以外は本に埋もれていた記憶しかない。
大学の長い春休みも本代をねん出するための最低限のバイトと、それから読書位しか予定は無いのだ。
だから、バレンタインの存在に気が付いたのはたまにやっているソシャゲのバレンタインイベントを見たからだった。
まあ、ないな。
すぐにそう思った。
けれど、高校の頃のバレンタインに紙袋から溢れそうになるチョコレートを持ち帰っていた蘇芳を思い出して、苛立ちともやるせなさとも違う妙な感じに襲われる。
自分には関係ないイベントだと昔から思っているし、今でもそう思っている。
別に俺が何もしなければ多分、2月14日って日は単なる普通の日になるのだろう。
それで1週間もすれば自分自身この良く分からない気持ちを思い出す事もない。
だから、それでこの話はお終い。
それが一番いいってことは分かっているのに、足が最寄りの駅の裏にある大型スーパーへと向かってしまう。
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