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「なぁフユキ、お前は今、『幸せの最中』にいるようなモンなんだぜ? その掴み取った幸せを捨てるなんてバカな真似、お前はしたくないだろ?」 「…っ!」 「『この程度』と切り捨てた、お前の自分で編み出した大爆笑シナリオによってその幸せは壊れるかもしれない…いわば、俺は、危うくお前の忌み嫌う『普通の日常』からお前を救ったところなんだ。ーーーそういう『可能性』が襲いかかることだってある事、お前は誰よりも良く知ってる筈だろ?」 「…勘弁してほしいなぁ、全く。意地悪するなぁアンタも」 帽子を深く被り直すフユキ。 その発した声は、今までの軽薄なそれとは違い、暗く圧し殺したようなものだった。 「アンタだけやで?この僕に向かって、大っ嫌いな言葉である『普通』なんて事言うの許すの。それに『逆戻り』とか『日常』なんて言葉付け加えたら……ソイツを僕、ぶっ殺してしまいそうや。」 その言葉には、何時(いつ)もは滅多に見せない…純粋な殺意が目に見えていた。 「そんな取り乱すなよ、お前らしくない。まあでも、これに懲りずにお前はまたいつも通りやりゃあいいさ。お前の考えるシナリオ、割と楽しみでもあるんだぜ俺は。…だがこれからお前の想像を超える事象が必ず起きる。頭の片隅にでも入れときな。」 その言葉を最後に、男は立ち上がり姿を消した。 この暗闇の中、ただ1人だけになるフユキ。 「………やれやれ。久し振りにこんな冷や汗かいたわ。」 取り乱す彼の姿を一目見たいと思う者はどれほどのいるだろう。 だがそれを見せる事は彼はしない。あの男以外には。 「さて、ほなら次行こか。」 その場から歩き出し、去って行くフユキ。 その時、その眼に映り込んだ『次の可能性』。 そこには、命を燃やして戦う英雄達が、そこにいた。
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