人生履歴書

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 面接試験が始まる3分前。僕は面接試験会場の受付の女性に渡された電子パットに必要事項を入力していた。自分の氏名、生年月日、学歴――ごくありふれた内容を入力していく。もう何社目か忘れてしまったぐらい就職試験を受け続け、やっとのことで個人情報を取り扱うこの会社の最終面接にまでこぎつけることができたんだ。入力ミスがないか何度も確認しながら丁寧に入力していく。  一通り入力し終え、後は最終確認ボタンだけを押すだけになり、僕は一度顔を上げ周りを見た。面接試験の受付の後に通された部屋には僕を入れて3人がいた。一人は30歳くらいの男性で、ラフなジャケットにジーンズ。もうひとりはリクルートスーツを着こなした僕と同年代くらいの女性だ。二人とも真剣な面持ちで画面に入力をしていたが、どこか面接に慣れているような雰囲気があった。  どれだけの人数がこの会社を受けていたのかは知らないが、僕は初めての最終面接というのもあり、緊張をしていた。  コンコンコン。  部屋のノックが鳴り、さっき受付にいた女性が「失礼します」と言って入って来た。 「ただ今より、最終面接試験を開始します。まず皆さんにお配りした電子パット、すべて最後まで記入済みでしょうか。まだでしたら記入を済ませ、最終確認ボタンを押してください」  僕は改めて記入した内容が間違っていないか確認し、最終確認ボタンを押した。僕がボタンを押すと女性は手に持っていた電子パットを見て、顔を上げた。
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