終章

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  「俺も最初は引いた。なんでそこまで徹底するのかと」 「ばかやろう。医療現場は個人情報の塊なんだ。医師は勿論清掃スタッフだって守秘義務が課せられるんだ。訴訟問題に発展する事だってあるんだぞ。それがわかってるのに夏哉がお世話になってる方々に余計な負担を強いたく無い」 配偶者や(患者が未成年の場合を除けば)実親ですら、患者本人の同意無しに診療情報その他を開示する事はない。ここにカルテが存在する事すら匂わせられない。それでも『家族だから!』『恋人だから!』と電話なり受付なりで騒ぐ自称関係者は後を絶たない。医師を待ち伏せする輩もいる。関係者なら本人に聞けばいい事をやいのやいのと……… 「ホント、隼斗のやる事にはちゃんと意味があるんだなぁ」 「どうせ融通が効かないと思ってるんだろ。でも他の事ならともかく夏哉の事は」 テーブルの向こうで夏哉の顔が歪む。 そしてポロポロと涙を零した。 「なんで泣くんだっ」 「だって~~~隼斗が俺のこと大事にしてくれる~~~」 「当たり前だろっ泣くなっ」
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