4863人が本棚に入れています
本棚に追加
/246ページ
『大事にする』。
……彼の声からそれを聞ける日がくるなんて。
彼をずっと思って、追いかけてきた私は
自分の胸の奥に、小さな灯が点ったように感じた。
「……私も。私もリョウのこと、ずっと大事にするね」
寄り添ったベッドの中でしか
打ち明けられない素直な告白に
リョウは優しくはにかんで
私を抱き寄せると
「ありがとう」
心からの声で、そう呟いた。
─── この時の私は、まだ知らなかった。
この時、私の伝えた言葉が
密かに、静かに……リョウへ恐れを招きよせて
彼が一人、怯えることになるなんて。
最初のコメントを投稿しよう!