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自分自身で演じようとしているのではないか、と。
まだ朝日が見え難く、
薄く雲が覆う薄暗い空を見ながら、
アイリは考え続けた。
それがアイリの思考をマイナス方向に進めながらも、
寝惚けた頭を覚醒させる手段であり、
反省と自分自身を見つめ直す手段にもしている事を、
無自覚にアイリは前世でも今世でも毎朝行っていた事だった。
*
暫く窓を眺めながら考えていたアイリは、
起き始めたバラスタとリエラがたてた物音で、
思考から現実へと引き戻る。
眠そうなリエラとバラスタの狼親子は、
尻尾を下に垂らしながらノソノソと歩いて、
台所に立っているセヴィアに「おはよう」と言うと、
バラスタは台所の食卓に腰掛けて、
リエラはぼーっとしながらも、
何かを探すように周囲に顔を向けていた。
探していた対象が居たようで、
アイリを見つけるとリエラは垂らしていた尻尾を、
一度ピンッと立ててから少し左右に尻尾を揺らして、
アイリに近付いて「おはよう、アイリ!」と、
元気良く声を掛けた。
その挨拶にアイリも笑って「おはよう、リエラ君」と言うと、
リエラは頬を染めながら、
尻尾をブンブンと左右に大きく振って、
アイリの隣の椅子へと腰掛けた。
それから他愛もない会話をリエラとアイリは行いながら、
気付いたようにアイリが呟いた。
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