ハッカのドロップ

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ハッカのドロップ

 彼女はハッカ味のドロップが好きだった。  白くて鈍く光っていて、楕円球状の飴だ。  いつもコロコロと口の中で転がしている。 「ドロップ、好きだね」  私が言うと、彼女はにっこり笑って頷く。 「一つ、食べる?」  鞄から取り出すドロップの缶。カラカラ振って一つ私の手の中に出してくれる。  白い楕円のドロップが、コロンと手の上に転がりだしてきた。  口に入れると、スーッとした香りと甘さが口に広がった。 「ハッカの味って好き嫌い別れるよね」 「私は大好き。彼も好きなの」  実に仲のよろしい事で。  どうしたらあんなに彼氏と仲良くいられるのかしら。 「距離を縮めるのよ。あの人の好きな物は私も好き。あの人の行きたい場所は私も行きたい。私と彼は二人だけど一人。そんな感じなの」  これはまた強烈な愛だ。私には真似できない事だけど、二人はそれで幸せなんだね。  羨ましくも少しはあるが、どちらかというと心配になる。  
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