第十六章 決意

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その日の夜、私はなかなか寝付けなかった。 「自分のことよりも…相手のこと…」 電気のついた部屋でベットの布団の中で仰向けになったまま呟いた。 滝さんは、奥様のことを考えて、仕事を辞める決心をした。 あんなに意地悪で性格悪いと思っていたけど、素敵に思えた。 会社で上を目指して野心を持っていた人が、それを捨ててまで守りたいと思う人が居る。 そんな風に愛される癒し系和み女子の山口さんを羨ましく思う。 左手を天井にかざす。 ブレスレットを眺めた。 外さないといけないと、わかっている。 だけど、なかなか決心がつかない。 私はこのまま、蛍への恋心を残したまま生きていくのだろうか。 愛した人に愛されず、ただ仕事に没頭して、愛されなかった相手を想いながら、1人生きていくのだろうか…。 私はゆっくりと身体を起こした。 「…悲しすぎる」 そんな未来は悲しすぎる。 すぐ先の未来を、自分で少し変えるのもいいかもしれない。 私はある決意をした。
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