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目が覚めると、俺はなぜか麻美の部屋にいた。窓の外からは雨の音がしている。
助けてくれたのだろうか? それにしても車に跳ねられたのだから、病院に行きそうなものだ。
答えはすぐに分かった。
部屋にあった姿見に映っていたのは麻美で、俺の姿はどこにもなかった。
いや、俺が麻美だったのだ。どうやら俺は彼女に生まれ変わったらしい。
慌てて日付を確認すると、それは三か月前の日付だった。
三か月前。ちょうど俺が麻美に逆ナンされた日だ。
なるほどすべてが分かった。
麻美がなぜ俺なんかに声をかけてきたのか。
そしてあそこまで共通点が多かったのはなぜか。
肉体関係を拒むのも当然だ。
俺はナルシストじゃない。
となれば、俺がするべき事は一つ。
傘を持たずに出かけ、店先で雨止みを待っているをしている青年を見つけるのだ。
三か月後に死ぬ、大して面白くもない男の人生に自分で最後の花を添えるために。
「ああもう最悪」
何ていいながら同じ軒下に入り、偶然を装って視線を交わしてから言うのだ。
「嫌ですね、雨」
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