運命の出会い

1/4
1人が本棚に入れています
本棚に追加
/4ページ

運命の出会い

 楽しみの無い人生だった。  四十歳にして無職。  ボロアパートとハローワークを往復する日々。  両親とも兄弟とも疎遠。彼女だっていない。  傘も無いから、こうして店の軒先で雨宿りしている。  店主の視線が痛いから、早く止んで欲しいなぁ。  雨が止まないまま時は流れ、一人の女性が同じ軒下に入ってきた。  髪の長い美人だ。  ちょっとだけ、ラッキーって気分になれた。 「ああもう最悪」  気持ち、わかります。  ちらりと女性の方を見ると、彼女も俺の方を見ていた。  こんな奴ですみません。 「嫌ですね、雨」  話しかけられた。  びっくりした。 「ええ、全くです」  こんな感じの答えで良いのか?  不自然は無いかしら。  女性と言葉を交わすのが久しぶり過ぎて嫌になる。  こんな人とお茶でもできたらなぁ。 「あの、こんなこと言うのも何なんですが……」  え、今度は何だろう? 「私、傘を持ってなくて」 「ええ、俺もです」  でなきゃこんなところにいないよ。 「お互い雨が止むまで待たなきゃいけない身でしょう?」 「そ、そうですね」 「良かったら、そこの喫茶店で話し相手をしてくれませんか?」  断る理由なんてなかった。       
/4ページ

最初のコメントを投稿しよう!