ゼロへ

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命じてくれよゼロ ほんとうはなにもなかったのだと いつでもすべてを消していいのだと 絶ってくれよゼロ おまえがあがいてきた軌跡のどこにも つもるものなど一房もないと おまえの言葉を埋めることなど レコードの溝をうめることぐらいたやすいと はっきりといってくれよ うつくしいフォルムのレトロニムに 酔えるのはおまえだけだと 刻んでくれよゼロ、さあ、効率的に なにかを欲さなければ なにも起こらなかったのであれば なあゼロ ぼくはいっそのこと 石ころのままでもよかったんだ ああなんで、こんなこと、いまさらでも かなしむ顔だけはみたくない このわがまま、ひとつだけ明かしたあとは 無限の罰に臥すから どうかゆるしてくれよゼロ とても恐ろしいんだ かけたものがなくなることが 目の前で 未来が過去になってゆくことが 無口な時のなぐさめは いるかどうかもわからないぼくを あるかどうかもわからない場所で 解放してくれる そこは白光だけが満ちていて まるで生気が宿っていないぼくが カラカラの灌木のように立っていて 立っているだけでやっとなのに 立っているだけでとても幸福で あたたかくて、永遠に ぼんやりと解放されているんだ そこではもういきたい場所はなくなっていたよ したいこともなくなっていた よろこびさえ 選ばなければうごかなくなった だから幸福なんだ、それが幸福なんだ ほらあの覆っているもの かくれて殴打してくるものも 忘れてしまっていた ついみいってしまうものや 近寄ってしまうものも忘れてしまっていた あれらはなんだったか 暗くなるとぷつぷつうかぶ現象の名は 貌は忘れていないのに 6本目の 役割のない指の 蝿の匂いのする爪の先から だらりとしたたった黒い液体が 白日に うつつ、うつつ、と渦をえがきはじめた 円、円、、円、、、 ぼくはなぜかなつかしい フリーだフリーハンドだ ぜんぶフリーハンドだった このままでいい理由ができあがったよ ゼロへ
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