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エレベーターに乗って、私の部屋のフロアまではすぐに到着した。
部屋までの少しの距離を手を繋いだまま歩いて、ドアの前に立ち止まった。
「涼太先輩、今日はいろいろありがとう。
美味しいおでんをご馳走になっちゃったし、こうして家まで送ってくれて。…楽しかった。」
「楽しんでくれたならよかった。俺も麻衣ちゃんといられて楽しかったよ。」
「私はいろいろ不慣れだけど…これからよろしくお願いします。」
「こちらこそよろしく。」
家まで送ってもらって遅い時間になってしまったし、申し訳ないなぁ。
そうだ。帰り道は寒いし、少しだけ家に寄って温かいお茶でも飲んでもらったらいいかな。
終電まではまだ時間もありそうだし。
「あの…。」
よかったら、温かいお茶でも飲みませんか。
そう言おうとして……辞めた。
『お前、今後男の家に一人で行くの禁止な。
男を自分の家に上げるのも禁止。』
ふいに、頭の中に声が聞こえたから。
『もし、麻衣が本当に好きな奴ができた時は、ちゃんと付き合えることになるまで、って条件付きな。付き合う前に家に行ったり、自分の家に呼んだりするなよ?』
誰の声かなんて考えなくても分かる、私を心配して掛けてくれた優しい言葉。
ありがとう。もう、大丈夫だよ。
でも…言おうと思った言葉は、少し軌道修正した。
「また今度…良かったら、うちに遊びに来てください。」
何か、胸に詰まるものがあったけれど。
すぐに気持ちを切り替えて、彼氏になったばかりの涼太先輩に伝えた。
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