…第4章 麻衣と涼太

51/53
150人が本棚に入れています
本棚に追加
/191ページ
エレベーターに乗って、私の部屋のフロアまではすぐに到着した。 部屋までの少しの距離を手を繋いだまま歩いて、ドアの前に立ち止まった。 「涼太先輩、今日はいろいろありがとう。 美味しいおでんをご馳走になっちゃったし、こうして家まで送ってくれて。…楽しかった。」 「楽しんでくれたならよかった。俺も麻衣ちゃんといられて楽しかったよ。」 「私はいろいろ不慣れだけど…これからよろしくお願いします。」 「こちらこそよろしく。」 家まで送ってもらって遅い時間になってしまったし、申し訳ないなぁ。 そうだ。帰り道は寒いし、少しだけ家に寄って温かいお茶でも飲んでもらったらいいかな。 終電まではまだ時間もありそうだし。 「あの…。」 よかったら、温かいお茶でも飲みませんか。 そう言おうとして……辞めた。 『お前、今後男の家に一人で行くの禁止な。 男を自分の家に上げるのも禁止。』 ふいに、頭の中に声が聞こえたから。 『もし、麻衣が本当に好きな奴ができた時は、ちゃんと付き合えることになるまで、って条件付きな。付き合う前に家に行ったり、自分の家に呼んだりするなよ?』 誰の声かなんて考えなくても分かる、私を心配して掛けてくれた優しい言葉。 ありがとう。もう、大丈夫だよ。 でも…言おうと思った言葉は、少し軌道修正した。 「また今度…良かったら、うちに遊びに来てください。」 何か、胸に詰まるものがあったけれど。 すぐに気持ちを切り替えて、彼氏になったばかりの涼太先輩に伝えた。
/191ページ

最初のコメントを投稿しよう!