パパとバレンタイン

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   バレンタインの事をパパに相談すると、バレンタインは三日後という事になった。  バレンタインというイベントを知った城の皆(特に男性)は一気にそわそわしはじめたような気がする。  皆、好きな人がいるのかもしれない。  アムとアスは「竜人には恋とか愛とか分からないから~」なんて言ってたけど。二人もいつか素敵な恋が出来るようになればいいのにね。  とはいう私も今の所、好きな人はいない。  でも、パパやお世話になっている皆には渡したいのでお菓子作りは頑張るつもりだ。  禁断の森でドリアードさんとニクシーさんの切り株テーブルを三人で囲んで会議をする。  チョコはないから、何を作るか悩みどころだ。 「何を作ろうか、お菓子。今の所候補に挙がってるのは定番の人参ケーキか、スライムクッキー、セントウパン、大蜘蛛の綿菓子……」 「うむうむ、どれも美味そうじゃ」 「アドラメルクは何が好きなのだろうか……」  そう悩むドリアードさんに私はアムからこっそり借りた眼鏡をピシッとはめる。  ちなみにアムは最近本を読むのに眼鏡がいるんだって。ストレスで老けたんじゃないかってアスは笑ってた。 「はい! ドリアード隊長! 報告いたします! 謎の協力者、K・T・Cの報告によると、アドっさんは人参ケーキが大好物のようです!」 「ほぅ! エレナ隊員、お勤め御苦労。褒美にこのドライフルーツをやろう」 「むぐ。ありがたき幸せ」  ドリアードさんのドライフルーツはやっぱり美味しい。  突然始まった一瞬の茶番劇にニクシーさんは「妾もそれ入りたかった」と拗ねた。 「こほん。で、あるならば……やはり人参ケーキか」 「そうだね。あ、このドリアードさんのドライフルーツ美味しいからドライフルーツ大盛人参ケーキにすればいいんじゃない?」 「おぉ! 流石エレナ! 天才か?」 「そ、そんなポイポイケーキの上に置けばいいものでもないと思うが……」 「大丈夫、大丈夫」  楽観的な私とドリアードさん。ちょっと心配そうなニクシーさん。  作るものは決まったので、次は材料集めだ。  といっても、大体はお城にあるんだけど……。  アドっさんの部下の料理人ドワーフさん達に事情を話せば快く材料を分けてくれた。    ──ここまでは順調。  ──でも、問題はここからだ。  ──考えてもみてよ。ドリアードさんとニクシーさんは妖精だからまともに料理をしたことがない。  ──そして私は……。 「ぎゃうっ! ぎゃっ!」  数時間後、怯えた様に首を振るレイに私は困り果てた。  一応完成した試作のケーキをレイに一口食べさせてみると……御覧の通りだ。  ドラゴンに恐れられる人参ケーキってどうなの……。 「確かになんか変な煙みたいなの出てるし、まずいのかな」 「なんかアーヴァンクの糞みたいな匂いもするしな」 「だ、だから言ったんじゃ! そんななんでもかんでも混ぜるものではないと! エレナ、レシピを持ってこい! 監督を其方に任せたのが間違いだった!」 「う、うん」  ドワーフさん達から事前にもらっておいたケーキのレシピを一通り読むニクシーさん。  そして次のケーキはニクシーさんの指揮の元で作っていくことに。  すると──。 「お、美味しい……」  私は全身に衝撃が走った。  ドリアードさんも石のように固まっている。 「これは我にも分かる……先ほどとは別物だ」 「ふふん。其方らはちゃんとレシピの用量を守らないからそうなるのだ」 「お、御見それしました……」  私とドリアードさんはニクシーさんに頭が上がらない。  でもまぁ、これでとりあえずケーキはどうにかなった。  あとは渡して、気持ちを伝えるだけ。   「頑張ってね、ドリアードさん」  そう言ってウインクをすると、ドリアードさんはやっぱり両手で顔を隠して照れていた。
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