運命の出会い(笑)

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運命の出会い(笑)

 どうしてこんなことになってしまったのでしょう?  私が悲しくなって泣いておりますと、「きゅううん、きゅうううん!」と自分の口からなんとも哀れな嘆きの声がもれ出て参ります。  また軽く暴れてみますと、動きに合わせまして、ぷらんぷらんと宙づりになった身体が網ごと揺れます。  現状を一言で申し上げますと、推定昼時、森の中、そして捕獲網にはまっている野生モンスターが私、ということになるでしょうか。  端的に申し上げて絶賛大ピンチですね。まったくもって情けない。  このように見え見えの罠にホイホイかかってしまうとは、淑女失格と言われてしまうかもしれません。  でも本当におなかが空いていたんです、三日ぶりのごちそうだと思ったんです!  ぷらぷら悲しく宙づりになって揺れていると、視界の端には元凶であると言っていい、いかにも熟した甘そうな赤い果実が地面に転がっており、私の鼻を芳醇な香りがくすぐります。  今の我が身にとってあれはまさにそう、絵に描いただけの食べ物。  ごはん……と思うと「ぴきゅん……」とまたなんとも悲しい声が口から漏れていきます。     
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