第1章 天使と僕 第2節~敵対する二人~

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張り合っているのか、互いにのしかかりながら睨みつけている光景を目にすると、僕は呆れ顔でため息をついた。 「お兄ちゃん、ため息って酷くない?」 「そうですよ!酷いです……。この妹さんにはしてもいいですけど……」 「はぁ?」 呆れるのも無理はないと思う。 梨華は僕になかなか自立しないし、この天使は妹にちょくちょく煽ってくるし、呆れない方が不自然だろう。 特にここは校内だし、こんなとこで喧嘩するとか周りの迷惑もいいところだ。 「まったく、二人とも喧嘩するなら誰もいないとこでやれよ」 「う、確かに……」 「まぁ、主がそういうならしょうがないですね」 僕のクラスメイトが不思議そうな顔をしている。 どうやら、この天使は周りには見えていないようだ。 「二人?澤田君何言ってるの?」 横から誰かが僕に話しかけてきた。 それは、一ヶ月前にこっちに引っ越してきた転校生の安藤ミリスだった。 「あはは、なんでもない……」 「そうなの?変な澤田君……」 彼女は少し軽蔑してるような目で僕ら兄妹を見ていた。 僕らが変に見られているのはこの天使のせいであって、ただのとばっちりだというのに。 「梨華、ちょっといいか……」 耳元で囁く様に僕は梨華に言った。 梨華を思いっきり引っ張って、先ほどの屋上へと走って行った。 「お、お兄ちゃん。はぁはぁ、どう…した…の」 僕は少し呼吸を落ち着かせて、言葉を発した。 「はぁ……、はぁ……。あの天使、周りに見えてないから梨華は多分変な目で見られてるぞ」 「えっ、見えて無かったの?」 「ふふ、バレてましたか……」 天使の羽がフワリと舞った。
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