Jingle bells,jingle bells

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 内心で言いわけしながら街路を歩く。深夜、人通りもまばらなメインストリートを行く。誰もおいらのことなんか見ちゃいない。自分のことでいっぱいかもしれないし、そうではないかもしれない。どちらにしたってそもそもおいらはあいつらにゃ見えちゃいないのさ。  おいらは人間ではない。  死神だからよ。  警官に見られたら一発でアウトの大鎌を背負っている。とはいえ、生きている人間から魂いただこうって腹積もりはない。おいらたちは死者専門だ。死してなお、現世に留まり、あまつさえ変容してしまった悪霊を斬るためにこの刃を与えられたんだ。  今日はそれもお休み。おいらが休みだと言ったら休みなの。通信端末がやかましいがそれも無視したらいずれ切れる。今日の悪霊は危険度ランクもEと最低だ。Sが最高だがそんなもん滅多にいないし、単独で相手にしていいのはAまでらしい。おいらは弱っちいのでDくらいがせいいっぱいだ。もっともこのランクは暇人どもが勝手に決めただけなのでアテにしている死神は少ない。  いっぽうで死神たちにも一部の好事家による非公式なランクづけがなされている。ただし純粋な戦闘力や実績だけの話ではなく、キャラクター性だとか『かわいいから』とか『こいつには恩がある』だか、相当に私見が混じっているのでアテにはならない。おいらはDだ。わかっていたさ。
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