サンタの贈り物

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ぐっすり眠っていたはずの少年は真夜中に目を覚ました。   部屋の隅に気配を感じ、そちらを見るとヒイラギの実のように赤い服を着た真っ白な髭の老人がニヤニヤしながら立っていた。   これは夢ではないか、この人物はサンタクロースその人ではないか?   気付けば枕元にリボンが掛けられた箱がある。   少年はぱっと表情を輝かせ、サンタを見るとサンタはどうぞといった風に無言で促した。   はやる気持ちを抑え、丁寧に包みを開くとピカピカのサッカーボールが入っていた。   ワールドカップの影響で世間は大いに盛り上がり、少年も始めたいと思っていたくらいだった。   箱を開けた少年の様子を見てサンタは彼らしくない嘲笑を浮かべていた。   少年は勢いよく布団をかぶり、朝まで顔を上げなかった。   次の年の同じ日の同じ時間、少年は再び目を覚ました。   部屋の隅の同じ場所に去年と全く同じ姿の老人がニヤニヤしながら立っていた。   気付けばの枕元には大きな長い箱が置かれていた。   少年は嫌な予感を感じながらそれを乱暴に開いた。   そこには見るからに上等なスキーの道具が一式そろえて入っていた。 それは少年がぜひ体験してみたいスポーツだった。   サンタはあごをあげてニヤニヤ笑っていた。   少年は乱暴にプレゼントをベッドから突き落とし、朝まで顔をださなかった。   次の年の同じ日の同じ時間、少年はまたも目を覚ました。   嫌な予感を感じつつ部屋の隅を見ると、去年と同じ人物がニヤニヤしながらこちらを見つめていた。   枕元に箱はなかったがサンタの手元にキラキラ輝く最新式のマウンテンバイクがリボンをつけられてあった。   それは少年が心からあこがれているものだった。   サンタはゆっくりとそれを少年のそばまで運んできた。   『良い子にプレゼントを、ホッホッホ・・・』   少年はたまらず怒声を上げて飛び起き、老人に掴みかかった。   サンタクロースは彼の体を受け止め、そして今度は彼らしい柔和な、嫌みのない頬笑みを満面にたたえた。   少年はハッと気づき、そして自分と、そしてこのお人よし老人を見比べた。   『メェリィ・クリスマァァス! ホッホッホッホッホ・・・』   サンタクロースは輝く粒子となって窓から消えた。   少年は声もなく泣いた。   そして老人に心から感謝した。   少年はようやくサンタの本当の贈り物を受け取ったのだ。
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