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私のアパートメントの一室では壁の一面にDVDや関連した本が置かれている。そして大きめなTVとソファを置いて、ベッドを置けばそれだけで部屋は一杯になる。
「大学時代から住んでいる部屋なんだ。日当たりもいいし、気に入っているからなかなか引っ越せなくて」
私がそう言っている間も奏はDVDの棚を物色している。なにか気になる作品があるか と尋ねると、奏はタイトルを見るのに集中しているのか曖昧な返事をした。そして目当ての作品が見つかったのか、奏の小さな声が漏れる。
「瞳さん、この作品って」
「見つけちゃったか」
私と奏が初めて会ったとき話題に上がった、そしてわざわざ奏が私の勤める会社に持ってきた、DVDを奏は目ざとく見つけた。
「なんで持っていないなんて嘘をついたんですか?」
「それは、あれだよ、あれ。ね」
「誤魔化さないでください」
私のなにもかもを射抜く奏の目に、私はいつもうろたえてしまう。奏の目は嘘をつかない。笑っているときは目も笑うし、怒るときも同様だ。奏は偽るということを知らない。
「もう一度、奏に会いたいと思ったからだよ」
私が恥を忍んで言うと、奏は私に抱きついてきた。そして私の肩口におでこを押しつけて嬉しいです、と言うのだから、私は奏を抱きしめずにはいられなかった。愛の言葉を雨のように降らせた。
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