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ちゃらちゃら小銭入れをポケットの中でいじりながら、わたしは果てしなく広くて暗くて、くらげが光る海から目をそらす。ひたひたとどこまでも続く波には、きっと、わたしがあんなにも名残惜しく思い、楽しみが終わってしまったことを嘆いていた、あのアニメの思い出が溶け込んでいる。
もう既にこの曜日のこの時間、テレビをつけるのは日課になってしまったので、来週から始まる新しいドラマも見てしまうんだろう。
そうしたら、きっとまた妹は邪魔したり、変なことを言ったりして、やっぱり一緒に見るのだろう。
「次のやつ面白かったらいいなー」
と、言ったら、妹が、どうでもいい、と跳ね返してきた。
「面白かろうとそうでなかろうと、意地でもワンクール見てやる。神様とかいう鼻もちならない奴が、わたしにそれを許さなかったとしても、そんな奴の言う事なんか聞いてやる気はさらさらない」
バチあたりな奴だなあ。おまえなんざ、神様も扱いに困るだろう。堤防から降りて、道の反対側で光る自販機に向かいながら、わたしは言ってやったのだった。
「神様は多分、いっくらでもドラマでもアニメでも見てろよって思ってるんじゃなーい」
全話見届けるまで、こっちに来るなって。
そしたら妹は、げたげたと、嫌になるほど下品に笑って、いきなりわたしの頭をサンダルではたいたのだった。
【ワンクール:完結】
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