竜二の告白

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「わ、悪い冗談なんかじゃねぇよな……」  だって、何だかんだひっくるめて2億近い  金額だったんだぜ。    その途方もない負債額が俺達親子を  どんだけ苦しめ続けてきたか……    たかが借金 ―― されど借金……    両親の亡骸を目にした時、  人ってこんなにも簡単に死ねるものなんだ、って  他人事みたいに思った……。    んで、自分はこんな死に方だけはしない。  って、心に決めたけど。  そんな覚悟はあっという間に吹き飛んで、  結局親と同じ道を辿ろうとした。    死ねば全ての苦しみから解放されるって  思ったから。    だけど、今は何度自殺未遂を繰り返しても  死ねなかった”自分の悪運の強さ”に感謝する。    やっぱり自分の将来は自分で切り拓いていく  しかないんだ。 「手嶌さ……」    絞り出した声は、情けなく震えた。 「っっ ――」  ”やばっ、泣く!”と思った。    じんわりと涙で滲んだ視界が、  書類の文字を見えづらくさせる。 「マモ」  って! それ、反則だし。  そんな優しい声で呼ぶなよ。    堕ちる寸前で、  何もかもを包み込むような柔らかい声は、  もう涙を絞る凶器でしかない。 「っ、ふっ ――ぇっ……」  まじムカつくとか、嬉しいとか、  ほっとしたとか、苦しいとか。  ごちゃ混ぜになった感情が、  真守の目から雫を溢れさせ、  ポロポロと頬を濡らしていった。 「てしまさ、っ……」  がくっと折れかけた身体を竜二に支えられた。   「しっかりしろ、成瀬真守」  そっと見上げた竜二の顔は、笑みを浮かべている。  けれどその目は、真守を試すよう見据えていた。  あぁ ―― そうか。  とんだ思い違いをするところだった。
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