コール

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 押し寄せた警察車両が山の背を赤く染める。今から本格的な現場検証が始まる。  病院に行くため、私と小野原は先に現場をあとにすることになった。今日は小野原の(現在の)バディがいないため、代わり羽田が仕切るらしい。それでも誰も文句を言わない。むしろピリッと場が締まる。 「羽田さん、まだイケんじゃないですか?」  小野原のからかいに羽田は照れくさそうに鼻の頭をかく。まんざらでもなさそうだ。 「こっちであってんのかな?」  という恐ろしい小野原の独り言は聞こえなかったことにしよう。  ナビを見る限り道らしきものも目印もない。GPSの感度が悪いせいかずっと空を飛んでいる状態だ。まぁ、それでもなんとかなるだろう。うん、してくれる。 「どこで気付きました?僕が警察官だって」  さぁ、答え合わせの時間だ。 「どこ?あぁ、盗聴アプリです」 「そこですか?」  小野原は意外だという感想を漏らす。でも、そこからカチッとはまった。  ものぐさな私はアプリの並べ替えなど高等な技を知らない。いつもインストールした順に並んでいる。  月島と一緒にストップウォッチのアプリを入れた後に見知らぬアプリが入っていた。あの日以降、私のスマホに触れたのは私と小野原。そして最後にいじったのは、ホテルで連絡先を交換したあの時、小野原だった。 「元々入っていたものを消して新たに入れ直しましたが、直前に変なフリをしてしまったので消されるかと内心ヒヤヒヤしてました。カップルアプリの方がまだ笑えるかとも思ったんですが、すいません、盗聴ができないもので」  再び、すいませんと申し訳なさそうにする小野原だが、 「しおらしくされても、単語がもう犯罪の香りしかしませんね」  素直には受け取れない。 「でも森野さんなら笑って許してくれるだろうって、信じてました」  小野原はカラッと笑う。そんなところに信頼を押し付けないでほしいんだけど?
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