終息

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「あんたはどうして帝国に着こうと思ったんだ。別に王国でもよかったじゃねぇかよ。俺は王国出身で王様とも会ったけど、そんな悪い人には見えなかったぜ」  俺達転生者にも丁寧な対応してくれたし、色々と助けて貰った。 何より一度は死んだ俺達を生き返らせてくれたしな。 「フハハハハハ!既に貴様はあの狸に化かされておったか!悪い人には見えないだと?貴様などに奴が本性を曝け出す訳がなかろう。いや、貴様だけではない。奴は誰一人として本性を見せず、心優しい王を演じているのだろうな」 「そう思う根拠はなんだよ」 「我輩が何千年生きていると思っておる。そういう腹の探り合いなら誰にも負けんわ」 「確かに……僕もまんまと騙されましたしね」  アハハハハと呑気に笑うアラベド。 いやいや、アンタはもう少し危機感を持った方がいいんじゃないのか?この爺さんどころか、長年一緒だった仲間にも裏切られたんだからよ。 「我輩が国王ではなく帝王についたのは、国王の考えが一切読めんからだ。腹に黒い物を溜めている国王とは違い、帝王は単純明快である。奴は魔族を滅ぼし魔界の領土を欲している。だが国王は何を考えているか分からん」  ザラザードは「王国ではなく帝国についた理由はもう一つある」と続けて、 「もし暴走した国王を倒せるとしたら、帝王しかおらん。今現在のパワーバランスは魔王軍=帝国軍>王国軍である。しかし魔王軍と帝国軍が戦争によって消耗している現在では、王国軍が有利になってしまう。現に、国王は漁夫の利を狙っているだろうな。勿論アルスレイアも帝王もそんな事は百も承知だが、それでも王国軍には勝てると踏んでいるのだろう。しかし、その甘い考えこそ間違っている」 「何が間違っているんですか?」 「王国もこの動乱期を見越して力をつけておる。最近では禁呪によって多くの異世界人を召喚し、他にもキナ臭いことをしておるようだ。消耗した帝国が王国に喰われる恐れもある。そうなった場合、魔族の未来がどうなるか我輩でも想像がつかん。だから我輩が魔王軍を裏切り、少しでも戦争を早く終わらせる必要があったのだ」  そう言った後、ザラザードは俺を睥睨した。 「が、我輩の計画もあと一歩のところで崩れ去った。貴様というイレギュラーな存在の所為でな」
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