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ペガサス
彼女は急いでいた。
早くこの絵を、完成させなければと。
寝る間も惜しんで、ひたすら絵を完成させる為に、描き続けていた。
彼女は絵描きだった。
だが描いた絵を、売ったりはしない。
いつもたった一人の為に、描いていた。
その人の為に、その人にピッタリの絵を、描いていた。
リクエストを受けて、描いている訳では無い。
その人のイメージに、ピッタリだと思う絵を、描いている。
だから相手が女性だったとしても、男性の絵になっていたり、動物や花の絵になっている時もある。
彼女の考える、感じる、その人のイメージを描いているのだ。
そしていつも、急いで描いていた。
彼女がその人の絵を描くと決めてから、その人に絵を届けるまで、いつも余り時間が無かったからだ。
何故なら、絵を届けようと決める相手は、残りの命が短い者ばかりだったからだ。
何故命が短い者ばかりを、選ぶのか。
それは彼女にとって、弔いの絵だからだ。
「私には貴方が、こんなにも素晴らしく見えている。」
そう伝える為の、絵だからだ。
だが時間と言う物は、とても残酷で、止まる事を知らない。
彼女は何度も、絵が完成する前に、相手に先立たれてしまっている。
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