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「それ、全部、手土産か?」
「あ、うん。どれも美味しそうだったから皆で食べたくて」とほくほくした笑顔で言うものだから、何も言えなくなる。
「お母さん、目、くりくりで顕に似てないね」
「そうかもな。俺はどちらかというと父親似だしな」
「そうなんだ」
じっと俺の顔を見ると「なんかここにいるの、すごい不思議で、すごい嬉しいな」と感想を述べた。
可愛らしく笑うものだから、そっと近づいてキスをした。
ぽかんとした顔で見つめるので、もう一度唇を重ねようとすると、ドシドシと足音が近づいてきた。
「顕人ー!!」と、勢いよく襖が開いた。じいさんだった。
「おお、この人が真唯子さんか」とにじり寄ってくるので、思わず阻止する。
「初めまして。小千谷真唯子です」と座ったままぺこりと頭を下げる。
「これ、じいさん」と簡単に紹介すると「祖父の彰文じゃ。アッキーと呼んでくれ」と、親指をたてる。
いや、その呼び方俺と被りかけててややこしいし、それでなくてもやめてほしい。
「はい、アッキーさん」と律儀に真唯子が答えるので、「いや、じじいで大丈夫だ」と揶揄した。
「こりゃ、じじいとはなんだ」
「……後で紹介するから、とりあえず、向こう行ってろ」
じいさんも負けじと火花を散らし始める。どうも昔から、じいさんとは折り合いが合わない。
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