籠の鳥の孤独ー1

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飲んで喋ってマンションに帰宅したのは夜の十一時だった。 今晩友達と会うことは伝えてある。 和樹さんはもう帰宅しているだろうか? 少し緊張しながら玄関ドアをそっと開ける。 ドアの内側は真っ暗だった。 玄関で一つ大きく溜息をつき、真っ暗な家に電気を点けながらリビングに進む。 キッチンには、出かける前に作っておいた彼の食事が温めるだけにしてある。 〝今晩は帰りが遅くなるので、僕の分の食事は用意しなくでいいです〟 何度この言葉を聞いただろう? この十日間で彼が自宅で食事したことはほとんどない。 それでも私は彼の分まで食事を下ごしらえして、冷蔵庫の奥に常備していた。 予定外に忙しくて、食べられずに帰ってきた時に、手早く仕度してあげられたら。 でも結局、それはそのままそっくり翌日の私の昼食になるばかりだった。
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