阿朱里

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ヘリコプターから降りる隈川が白波瀬から連絡を受けている丁度その時、白いシャツに黒ズボンの何者かが背後から脇を走り抜け、瞬く間に甲板から姿を消した。 同時に白波瀬からは、それが阿朱里であることを知らされたのだった。 ─── 一方、 国軍将官である立石らが催す護衛艦パーティーに阿朱里が潜り込んだ可能性がある、との一報は管理局職員全員に大きな衝撃を与えた。 無論、管理局首長である澁澤も、 「すぐに鷹堂を呼べ。 それから立石の息が掛かってない参謀に護衛艦入艦の手配を依頼。 一番近い保護センターから応援を送り込め。 但し管理局からの者とバレないようにしろ」 (にわか)に騒然となった局内に指示を響き渡らせた。 「司法省へはロイヤルオメガを危険に晒したことを理由に白波瀬へ渡した番内定を正式に取り消す旨、即時通告。 当該艦にてアシュリ神保護の後は 白波瀬のみならず、司法関係者一切の接触を禁止する」 自らも阿朱里の保護に向かうべく支度を始めたところで事情を聞きつけてきた鷹堂とエントランスにて合流した。 用意された車から降り立って二人を迎えた運転手に、 「代われ」 と鷹堂自ら運転席に滑り込み、澁澤を乗せると猛スピードで空港へ向かった。 「ロイヤルオメガに対する保護義務違反だ。 番内定を維持するならば、白波瀬には相当の代償を求めなければな、しかしそれも、、、。 アシュリが無事であればの話だが」 潜り込んだ先が立石の専用艦だけにバックミラー越しに見る澁澤の表情は厳しい。 移動中の前園から話を聞けば、阿朱里が管理局で立石から暴行を受け手当てをした際、 迂闊にも、未だ保護されてないオメガに対して現在も表沙汰にならず続いていると思われる悪行為の数々を伝えてしまったと言う。 「希望を担う者が復讐に転じたか」 澁澤は苛立たし気に呟いたが、 鷹堂は管理局で起きた国軍将官によるロイヤルオメガ暴行という、前代未聞の事件に居合わせた白波瀬が事の重大さを理解してないわけはなく、既にできる限りの手段は講じているであろうことに望みを託した。 「立石への怨恨がここまでとはな」 風切る音が大型の車内に響くほど速度を上げる中、澁澤は今後の展開を練るべく腕を組み目を閉じる。 しかしハンドルを握る鷹堂にはオメガ種に対する立石の卑下と執着、 また『捨て身』でその立石の元へ復讐に向かった阿朱里の心情が手に取るようにわかり、 一刻でも早く保護しなければ、という思いしかなかった。
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