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クロムは、彼が黙って出て行ったことに怒りを覚えた。
だが、それ以上に悲しくて、寂しくて涙が止まらなかった。
それから3年後――。
いつものようにテーブルに付いたロミーとルーに、パンとチーズ、それから暖かい野菜スープを出すクロム。
黙々と食べながら、彼女は外に仕掛けた罠には、何の異常もなかったと伝える。
それからクロムが笑顔を振りまきながら、他愛もない話を始めた。
「また合成種を探しに行くの? あまり無理しちゃダメだよ」
「わかった」
「それから酷い傷を受けたのに戦うのもね。じゃないと死んじゃうよ」
「わかった」
「まったく、ロミーがいなくなったらボクとルーがどれだけ悲しむかをちゃんと理解してよね」
「わかった」
「もうっ!! さっきからわかったしか言ってないじゃないか!!!」
それは、いつもの朝だった。
だが、少しだけ――。
ほんのちょっぴりだけだが変化があった。
ルーはその変化に気が付いているのか、2人を見て嬉しそうに鳴いた。
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