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「部署が離れていても君の噂は聞こえてくる。今はちらほら福士さんとの仲を怪しむ声もあるな」
ああそれは、ただの勘繰りなのだろうが、あながち間違いでもないから噂というものはまったくのデマとも言い切れない部分があるのだろう。
「福士さんにも先日告白されました」
「…そうなのか。君、本当に凄いんだな」
八奈見は感心するようにつぶやいた。同時に引いていることもよくわかる。
「しかしあの人は既婚者だったと思うが」
「はい。ですから困っています。現在調停中だそうで、離婚成立後に恋愛対象として見てほしいというような言われ方をされました」
「離婚間近だったとしても不倫に変わりないじゃないか。いや、この場合セクハラになるのか」
「そうです。セクハラです。やたら僕の手などに触ってきますし」
そこまで言ったところで、会話しつつも淡々と食事を続けていた八奈見は、険しい顔をして箸を止めた。
「また君は触らせっぱなしでぼーっとしてたのか。何をやってるんだ」
「ぼーっとしていません。ちゃんと咎めました。立場上そこまで強く言えなかったのは事実ですが」
「セクハラが度を超せばどうするんだ。法務省のほうに職場のセクハラ相談窓口か何かあったんじゃないか。相談したらどうだ」
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