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「女性でもないのにそうそう騒ぎ立てる勇気はありません。それに手を握られる程度でセクハラの立証が成し得るかどうか…」 「裁判じゃないんだから立証までする必要はない。というか志賀はその話を聞いても素知らぬふりをしているのか。俺なら気が気じゃないが」 「志賀さんにはセクハラについて伝えていません」  と言うと、はあ? と八奈見は責めるような顔をしてこちらを見据えてきた。 「それも言ってないのか。何故言わない?」 「志賀さんがそこまで関心がないようで」 「そんなわけないだろうが」 「八奈見さんのように追及してくることはありません。福士さんの話をした時も、大変そうだね、という雰囲気で話は終わりました」 「それは君があまりに多くの男から日常的に口説かれているから、またか、と思っただけだろ。嫉妬していないわけじゃないし、セクハラの話を聞いていないならそういう反応で終わってもおかしくない」  そうなのか。いつも深く掘り下げずに終わるからあまり嫉妬していないのだろうな、とこちらも割り切って流していた。麻木としては逆に嫉妬されるほうが困るからだ。だって口説きや告白なんて日常茶飯事過ぎてきりがない。毎回きつく尋問されるような付き合いのほうが苦痛でしかない。  だから流してくれることは有り難いくらいだ。
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