閑話:あやかしの夏

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 すると、それを耳聡く聞きつけたふたごは、互いに顔を見合わせて首を傾げた。 「そうか? わかんねえな」 「どうだろうね。皆、こういうもんじゃない?」  ふたごはそう言うと、楽しそうにけらけらと笑った。 「だってお前、面白そうだからな。普通、遊ぶだろ」 「それに僕たちには、早急にツッコミが必要だと常日頃から思っていたからね! 夏織と僕たちじゃあ、どうにも収まりがつかないし」 「だから……俺はツッコミじゃ」 「「ツッコミだろ?」」  人の話を聞かないふたごのあやかしに、俺は深く嘆息した。  ……ああ、疲れた。  この数分間で、肝が冷えたり、呆れたり、うんざりしたり……感情が忙しすぎる。いつものように自分を抑え込もうとしても、このふたりに上手く乗せられて、感情を鎮めることが出来ない。正直言って、酷く落ち着かないし、沸き上がってくる罪悪感が半端ない。  ――感情を露わにするなと、俺を叱る人はここにはいないと言うのに。  ――その必要もないと、頭では理解しているのに。  誰にも知られない場所に、隠れてしまいたい衝動に襲われる。  その時、ここにはいないあいつ(・・・)の言葉が急に蘇ってきた。 『あらまあ、また怒られたのかい。感受性豊かなのは、ご主人様のいいところなのに』     
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