Deal With The Devil

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多くの動物たちが、そして私たちの太古の祖先がそうであったように、強いオスにメスは服従し身体を預ける。それは遺伝子レベルで刻まれた私たち女の本能だ。今、私は目の前の男性を、最強を誇るオスと認識し、メスのひとりとして本能から虜にされているのかもしれない。今まで、もしかしたら私という女は、今まで本当の『男』を知らずに生きてきたのかと思う程、彼の存在自体がただ圧倒的で、現代でも、女はそんな男の前では無条件降伏だということを厭というほど知らしめされている。 「千夏」 彼に声を掛けられ私ははっ、と我に返る。私を見る目に訝しさを感じるが、何もなかったかのように頷き掛けた。彼はそれに応えるかの如く、私に覆い被さり私の髪を梳いた。そして、優しいキスが降ってくる。その間、私は身体を小さく折りたたみ、そして脚を開く。彼は唇を合わせたまま、私の中に割り入ってきた。硬く熱いモノが久々に自分の内に入ってくるというのに、痛くないどころか内は彼を離さなかった。私の身体は今まで溜めに溜まった熱が、彼と私の境界に集まり、耐えがたい疼きに変わっていく。私は堪らず、彼の唇の束縛を振り切って、声を漏らしてしまう。 「あぁ、……あなた、が、わかる……、――きもちいい……」 すると、彼も苦しげな声を押し殺していた。私はその表情を焼き付けたくて、彼の頬に片手を添え、その閉じられた目を見つめた。私の視線が自分の顔を這うのが、解ったのだろうか?バツが悪そうに目を開く。そして、彼は視線を私のそれに合わしてから苦しげに声を発した。 「――ったく、欲しいのはお互い様なんだよ。それくらい分かれよ、千夏」     
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