最終話「あなたがいるから」

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 見栄っ張りなだけの金持ちの令嬢や、玉の輿狙いの打算にまみれた女にやるくらいなら、花衣のように外見も内面も美しい娘に取られる方がいい……。単純な母親としての感情から、藤緒はそう感じていた。  だから今回、花衣が自分の期待を裏切り敵前逃亡したかもしれないと感じた途端、息子と彼女の復縁も不可能に思えて、それで藤緒は心底がっかりしたのだった。  しかしそんな失望感は一切表に出さず、藤緒はさっそく、美里の自宅リビングで開かれた、スタッフ一人一人による衣装アイデアの発表会に参加した。 「えー、パーソナルカラーで判断すると真邉さんはブルベの冬タイプですので、衣装もそんな真邉さんに合ったカラーコーディネイトがよろしいかと思い、まずグレーのセーターと黒のスカーフ、それから……」  まず一番手に、美容オタクらしい日本人の女性スタッフが発表した。  次いでイタリア人らしい快活な男性スタッフは、「やはり日伊合作ですから、イタリアらしいファッションを追及すべきだと思いました。これはマナベさんの美しいデコルテを活かしたドレスで……」と、イタリア人らしくセクシーで女らしいデザインをアピールした。  どのスタッフの意見もなかなかに貴重で、藤緒は感心しながら発表を聞いていたが、なぜか美里はむっつりと黙り込んだまま不機嫌そうだった。     
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