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最終話「あなたがいるから」
1
月曜日、午後十時。
ローマ郊外にある美里の自宅には、すでにスタッフのほとんどが揃っていたが、その面子の中に花衣の姿だけがなかった。
美里の家に泊まっていた藤緒は、集まったメンバーの中に花衣がいない事実に、ひどく落胆した。
一体この落ち込みの理由は何かと自分なりに分析してみて、実は自分が、意外なほど息子の元カノを気に入っていたことに気づいた。
初めは、「大人しそうな顔をして、したたかな本性を隠している狡賢い娘だ」と決めつけた。
だが二人きりになって話をしてみると、素直だが頑固で、不器用だが一途な、昔の自分と重なるところのある娘だと分かった。
そもそも本当に計算高い女ならば、御曹司の彼氏との関係をキープしたままO-Cへの就職もゲットしようとするだろう。
一砥のことを話す花衣の表情は真剣そのもので、その揺れ動く表情からも、彼女がまだ一砥のことを忘れていないことも分かった。
お互いにまだ本気で想い合っているならば、復縁もありうるだろうと藤緒は思った。
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