ドッグファイターRYO

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この競技に出場するマシンには、車体のノーズとテールの、規定(レギュレーション)で決められた位置に、これまた規定で決められたガンとセンサーがそれぞれ装着される。センサーは直径30cmほどの黒い半球で、上下プラスマイナス15度、左右180度の範囲から照射されたレーザーガンのビームを検知する。互いが互いのセンサーを狙ってレーザーガンを撃ち、自分のセンサーがキャッチした相手のレーザーの照射時間が規定秒数を越したら負けである。従って、互いが互いのテールを目指し走ることになる。これが「ドッグファイト」と言われる所以(ゆえん)だ。 --- 航空自衛隊の戦闘機パイロットだった俺は、事故で網膜剥離を起こしてしまい、辛うじて失明はしなかったものの、これ以上過大なGがかかる環境では再発は免れない、ということで除隊を余儀なくされた。そんな俺に声をかけてきたのが、学生時代の友人の久里原(くりはら)だった。 自動車部だった俺たちは、当時俺がドライバー、ヤツがナビゲーターとなってオンボロの初代スバル・インプレッサWRXに乗り、草ラリーに出場して見事3位に入賞している。青春時代のいい思い出だ。卒業後俺は空自に入隊したが、ヤツは趣味が高じて某全国チェーンの自動車用中古パーツショップに就職し、今はなんと店長をしている、という。 「榊、お前ドッグファイトやらないか?」 「何言ってんだ。俺はもうどう頑張っても戦闘機乗りにはなれねえんだぜ」 「いや、地上の、さ」 「……はぁ?」 いぶかる俺を久里原は無理矢理競技場に連れて行った。それが俺とLVSとのファースト・コンタクトだった。     
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