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「考えてもしょうがないことばっかり頭に詰め込んで難しい顔してるより、そうやって笑ってるほうがいいんじゃない?」
……………………。
その瞬間、自分がどんな顔をしていたのかわからない。わからないけど、こっちを見ている司さんの眼をまっすぐに見ることができなかった。そんな俺に、「一応、きみより十年長く生きてるから」と司さんは言った。
俺の手をするりと滑り落ちたグラスが、真綿のような羽毛のような柔らかなもので受け止められた気がした。昨夜、司さんが俺の身体を拭いてくれた、フワフワのバスタオルみたいにいい匂いのする柔らかなもので。
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