6-10 ふたりの日々のはじまり

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しばらくすると気を取り直したように真智子が言った。 「一緒に暮らせるようになってよかったね」 「うん。そうだね」 「高三の頃のこと思い出すと、こうしているのがなんだか不思議で」 「お互い、真剣だったからね」 「これからもふたりでいろいろなこと乗り越えていこうね」 「じゃあ、先ずは真智子のアンサンブルの課題曲の前に手慣らしで真智子のお得意のドビュッシーの『ベルガマスク組曲』の「プレリュード」を聴かせてもらおうか」 「はい、病み上がりだから大目に見てね」 慎一は真智子を抱き締めていた手を離すと再びソファーに座った。  大きく深呼吸すると真智子はドビュッシーの『ベルガマスク組曲』の「プレリュード」を弾き始めた。ピアノを演奏しながら、慎一の真智子を見つめるまなざしを強く意識するとともに、高校の音楽室で一緒に練習した日々に呼び戻されていく感覚で気持ちが満たされ、知らず知らず心が弾むような充実感に包まれていた。
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