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予想通り資料が山積みに机の上に置かれ、どれからやってもいいよという顔でにっこりと微笑まれた。
「私も、これが終わり次第手伝います」と、高橋さんは私のリストを受け取ると早速仕事を始めていた。
チラッと栗栖社長の顔を見ると、特に変わった様子はない。
『ホントこの部屋の人達ってみんな役者だな』と心で思い、腕まくりをしてパソコンに向かった。
久々の資料作りは、以前よりポイントが掴めているので作業は意外と順調だった。
長谷川社長には敵わないけど、思ったより苦にならないので、黙々とやっていると、高橋さんも先程の資料が片付いたのか手伝いに入ってくれた。
社長達の女性関係は最悪で、私もここに来てかなり振り回されてるけど、その代償として仕事のスキルは上がっている気がする。
前の部署では経験できない事に沢山取り組めているし、そういう意味では勧めてくれた部長にも感謝していた。
部長も今は高橋さんのチームでリーダーを任されていて、重要なポジションについている。
初めはその位置に憧れを抱いていたが、今では社長補佐という仕事も充実している気がする。
『人って変わるんだな』
販売員から本社に勤務して、前の部署で力を発揮できるよう毎日頑張って来た。
この部署への異動をあれ程嫌がっていたのに、――おまけに絶対に好きにならないであろう人物に恋をするなんて。
「そろそろお昼にしませんか?」
時計の針は13時を回っていて、社長達はお昼に出掛けてしまった様子。
どうやら没頭しすぎていたようで、高橋さんと一緒に食堂に向かった。
「量も多いし疲れていませんか?最近、坂田さんが栗栖社長と行動を共にしてるので、構ってって欲しいのかもしれませんね」
「そうですか?いつもと変わらない様子ですけど」
構うどころか、作業が忙しすぎてお互いに会話も出来ないぐらいだ。
色んな意味で疲れているので、キノコピラフセットを注文し、ガッツリと食べている。
もしかすると夕方休憩が取れないかもしれないので、しっかりお腹に入れておきたかった。
「今日の長谷川社長はやる気で、私としては少し安心してるんですが」と話す高橋さんが嬉しそうに見えた。
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