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金色の鱗に包まれた、双頭の翼ある龍は、二つの頭を上空へ向けた。
「さあ、では、行きましょうか」
三っつめの口が、左右の頭を鼓舞するように言うと、大きな翼が開き、ばさり、と、砂煙をあげて龍が飛び立った。
かさかさと音をたてながら、右と左、二つの頭を持つ龍の母の遺骸がついに崩れ落ち、塵となって強風にさらわれていった。
母龍の身体を分解し、土に還した微生物にとっては新天地を求めての旅だった。最後の巨竜の身体は翼を持って天に舞い、分厚い雲の層を、硫酸の雲に身を焼かれながら、抜けて、大気の外まで飛び上がった。
新天地を求めていたのは、巨竜自身であったのか、宿主を操り、新たな寄生先を求める微生物のしわざであったかは、今となってはわからない。
荒涼とした赤い大地は、まるで最初から生き物など居なかったように砂埃が巻き上がり、変わらずジリジリと焼けていた。
(終わり)
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