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 公園から水門が見えるのが、この町の特徴だった。  真正面に見える水門は左右対称で、主張しないが洒落た装飾がされている。  観光客も多いが、地元の人間にとっても憩いの場だった。観光客は水門に目が行くが、地元の人間には見慣れたものなので、街の住人は水門に興味があまりない。よそから来たか、町の住人なのかは、そうした行動で見分けることができる。何年か前にでかいスーパーが建ったこともあって、人がより増え、行きかう人々の流れはとめどない。  冬の終わりを感じさせた三月を過ぎ、風の中に春の空気を孕みながらも冬の尖った空気が残るころ。俺は相も変わらず、この公園で酒をあおっていた。  酔うにはバーボンがちょうどいい。相性がいいのだ。酔えるが、気分は悪くならない。バーボンの香りとの相性がいいのかもしれない。 「静雄ちゃんまた飲んでんのかい」 「うるせえ」  体が温まってきたあたりで、声を掛けられる。公園を毎日散歩している秀だ。俺よりも年上だが、小柄でやせっぽちで妙に愛嬌のある男で、こうしていろいろな連中に話しかけては長話をしている。 「静雄ちゃんかっこいいよねぇ。俺なんてコンビニのワンカップだよ」     
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