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「ダメじゃないけど! 全然ダメじゃないけどっ!! 職場の付き合いとかそう言うのはいいのかなって。僕はむしろ会えて嬉しいというか、相変わらず伊万里は非の打ち所なく綺麗だなというかほんとにまぶしくてしんぞうがどうにかなりそうというか!!」
「和泉……、お願い、それ以上は止めて。俺嬉し恥ずかしくて死にそう」
伊万里はあからさまに頬を染めると、手で顔を覆った。なんで!?
彼の思考回路は僕にはいまいち理解しづらいけど、あげようと作ってたチョコがこんなことになっちゃって、もうプレゼントは不可能。ボウルの中身は空っぽだし、回収とか無理だし。僕の髪も服もドロドロで全身チョコまみれで、匂いもすごい。悲しくなったけど、伊万里がいてくれるだけでなんとなく気分は上向きになるとか、僕ってやつはなんてお手軽なんだろう。
結局、飲み会には行ったけど、顔だけ出して帰って来たってことなのかな。僕との約束守るために。でも予定聞いて飲み会行くって言われたら、誤解されても仕方ないよ。うん。悪いのは伊万里だからね。
ヤバっ、なんかすごく嬉しくなってきた。
一杯だけ呑んできたってことは、多分ご飯も食べてないよね。なにかお腹に優しいものでも作ろうかな。でもその前にこのチョコ、なんとかしないと。
そう思ってバスルームに向かおうとしたら、腕をつかまれて、そのまま背中から伊万里に抱き込まれる。
「俺こんな美味しそうなショコラ、初めてだよ。ねぇ、和泉。これ全部食べていいの?」
咎めようとしたら、緩く耳朶を食まれて、ぞくりと身体が震えた。え、ショコラって、もしかして。
「うん、すごく美味しそう」
目の端でペロリと、舌なめずりする獣の顔が映る。
「溶けるまえに、全部俺が食べてあげるから」
チョコの匂いより甘い声に、本当に僕ごと溶けてしまいそうだ。伊万里の声って、チョコみたい。甘やかでどこまでも熱い。
僕は確かチョコって媚薬の効果があるんだったかな、とか。明日掃除大変そうだ、なんて。そんなことを思いつつ。
「唐辛子も入ってるから、心して食べるように」
甘いだけの僕じゃないんだからね。と、茶目っ気をたっぷり込めて念を押すと、降りてくる彼の唇を受け止めた。
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