第34話 side kira

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第34話 side kira

佳子ちゃんと結城の事もスッキリしない。 ──そのまま新年の挨拶に各社へと向かった。清水部長の所へは、俺が。たまたま、兼ね合い的にそうなった。それに安堵する自分にも……ため息しか出ない。スッキリしない。何もかも。 「お、君の方か」 「すみません。新年一発目が僕で。明けましておめでとうございます。今年も、宜しくお願い致します」 丁寧に頭を下げると、彼も同じように挨拶を返してくれる。 「今日ってさ、どうやって決めたの? 」 どっちが、来るか? 「私情は挟んでませんよ。兼ね合いというか……」 「ふっ、だろうね」 「もう、色々バレてるだろうから言ってしまいますけど……僕に権限はありませんよ。公私ともに」 「指輪(それ)は? 何で? 」 清水部長とは、ちょいちょい飲みに行く仲で、俺の体質については話してある。指輪を、外したのも……気づいていたのか。 「色々理由ありますけど、前向きな理由を挙げると。治そうと思って」 「君みたいな、綺麗な男が復帰するとなると……(こっち)は脅威だし、(あっち)は……色めき立つね」 「何言ってんですか、社内一のモテ男が」 「えー、うちの社にもモテてんでしょ? 君」 「清水部長(そっち)が相手しないから社外(こっち)に流れてくるんですよ」 「相手、して欲しいの? なら、部屋(あそこ)取ろうか? 」 そう言ってニヤリと笑って親指で指した方向には、それなりのランクのホテルがある。 「あー、僕そっちはハジメテなんでお手柔らかに」 「はっ! マジで!? 意外だなぁ。新年早々こんな美人がOKしてくれるとはね」 意外って何だよ。相変わらずだな。 「何ですか? 新年早々そのバンコランなジョーク」 「美少年の自覚はあるんだ? 」 「もう、少年の歳じゃないですけど……美しいのは否定せずにいます」 ニッと笑い返す。しょうもない事を言い合って、もちろん仕事の話もしっかりして その場を後にした。 全く面白い人だ。ああ、そうか。指輪で女避けするんじゃなくて、そっちだって事にしとけば良かったな。 あ、でも、俺タッパはあるけど清水部長とか大友とかは体格負けするし、組敷かれたら逃げられないな。部長バージョン……大友バージョン……。 頭の中に物凄く心理衛生上よくない映像が流れ、考えるのを止めた。
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