23章 ラブライフ

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「晶さん、これ見て!」 「………」 商品棚を隔てた向こうからそんな声が聞こえていた。二人してだて眼鏡を掛けて街中を歩く── 途中、インテリショップに立ち寄ると夏希ちゃんは心なしか女子の様に盛り上がっていた。 歯ブラシのペアのセットを指差して夏希ちゃんはやたらに無邪気な笑顔を向ける。 アニマル柄のそれを見て、買うかどうか真剣に悩んでいるようにも見えていた。 「これ買うの? なんか使い勝手悪そう」 「………」 あたしは現実主義だ。キリンの模様をしたコップの握り手には小さなコアラが乗っている。 見ただけで邪魔だ…… そう思うあたしを見ると夏希ちゃんはそのコップを棚に戻した。 「別に買いたいワケじゃないよ……ちょっと可愛かったから晶さんに見せようと思っただけだから…」 言いながら何気にムクれて背を向けた。 「………」 あたしはそう言った夏希ちゃんの後ろ姿を見つめ、夏希ちゃんが手にしていたカゴに目を止めた。 そこにはホルスタイン柄のコップが一個、中で無造作に転がっている。 「うし…好き?」 「──…っ…これは」 「好きなんだ? うしが…」 尋ねられて何気に恥ずかしそうに顔が赤くなっていく── なんだか夏希ちゃんの新たな一面を見た気がして、あたしはつい真顔で戸惑う夏希ちゃんを見つめた。
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