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店内へと案内されると、目の前の光景にふっと一瞬の既視感に襲われる。見覚えがあると感じたのは当然で、和彦はこの店を知っていた。実際に足を運んだのは今夜が初めてだが、クリニックのインテリアについて秦に相談したとき、写真で見せられたのだ。
もう一軒の店同様、ホストクラブらしくない内装は、秦の好みが強く反映しており、インテリアの一つ一つも、物がいい。深みのある紫色がところどころで使われているが、妖しさを演出はしていても、下品にはなっていない。
すでにレストランから移動してきた客が数人いたが、その中に一人だけ、カウンターで飲んでいるスーツ姿の男がいた。大柄で引き締まった体躯をしており、こちらに広い背を向けているにもかかわらず、近寄りがたい迫力を醸し出している。
車中である程度の覚悟はしていたが、こんな場で見るこの男のインパクトは強烈だ。
強張った息を吐き出した和彦は、知らない顔をするわけにもいかず、静かに歩み寄った。
「――……なんで、ここにいるんだ」
和彦が話しかけると、長嶺組組長という物騒な肩書きを持つ男が、肩越しに振り返った。
「ホストクラブというから、ロクな酒がないのかと思ったが、ここはいい酒が揃ってるぞ。バーテンの腕も確かだ」
そんなことは聞いていないと、賢吾を軽く睨みつける。唇に薄い笑みを湛えた賢吾に指先で呼ばれ、和彦は隣のスツールに腰掛ける。
「どうしてあんたが、ここにいる」
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