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土曜日、佳子の病室へ入ると、そこにいたのは、俺も顔見知りの佳子の古くからの友人だった。
「あ~、大輔さん久しぶり~」
「お~、来てくれたんだ、ありがとうね」
言ってから、気づいた。……自然すぎた。
だけど、由美ちゃんのこの感じだと、佳子も何も言ってないのか。
「えへへ~、加奈が結婚するんですよー。私達、幹事なんですけど……明日の打ち合わせ、佳子、来れなくなっちゃったから」
「ああ、加奈ちゃん結婚するんだ。そら、おめでたいね」
もう、みんなそんな年か。
「あれ? 聞いてないんですか? 実は……私も。年内には。だから、あのグループ……独身は佳子だけになっちゃう」
……ああ、そっか。
「そっかぁ、じゃあ、急がないとねぇ」
佳子も。俺と過ごしてる場合じゃないよね。……まあ、後で何とでも説明したらいっか。
「大輔さん……毎日来てるんですか? ここ」
「いや、仕事で平日はあんまり来れてない。今日は……洗濯物……」
「うわぁ、愛されてるねぇ、佳子」
……そうだよ。愛されてる。
「はは」
「大輔さん来たし、お邪魔かしら?
後は……お2人で」
彼女が帰った後、佳子は気まずそうに俯いた。
「言ってないんだ。……俺たちの事」
「うん……はは。言ってなくて良かったかも。この状況……。何て説明していいか」
「何で? 何で言ってないの? 」
「タイミング……もあるけど……結婚決まった人に……別れたって言いにくくて……」
そうか、“タイミング”か。
「……結婚……したかった?……俺と」
今さら聞いても……だけど……もし、そうなら。
「その時、付き合ってたのは……大ちゃんだったからそりゃあ大ちゃんとって……思うのは普通じゃない? 」
「うん……そだな。未練があって言わなかった訳じゃ……ないよね? 別れたこと」
……その時……ね。ないか。そら、そうか。
しつこいな、俺も。
「ねぇ誰? ……あの月曜日の」
佳子が肩をビクつかせた。分かりやすく動揺……しやがって。
「か、会社の同僚で……」
佳子、顔、真っ赤。可笑しい、なんだよ。これ。
なんだよ、俺。
「すんごい、イケメンだね」
「や! ほ、ほんとに。そーなの、そーなの」
……アッサリ、認めるよね。佳子はうっれしそうな顔で頷いた。
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