10

19/20
1041人が本棚に入れています
本棚に追加
/265ページ
朝がやってくるとどうしてこんなにも残念感が襲って来るのか・・・。 明慶と芙蓉はベットの中でずっと離れずにくっついていた。 互いの体温が互いの心まで包んでくれるようで、安心して時間を過ごせる。 呼吸する音もまるで優しい子守唄に思えてしまうのだから不思議だ。 もう少ししたら、きっと柳ヶ瀬夫婦が自分達を起こしに来る。 「ドアに鍵をかけて、徹底抗戦なんてどうだろう。」 明慶は芙蓉に囁くと、彼は小さく笑って 「木蓮を怒らせると大変ですよ?明慶様もご存じでしょう?」 そう言って明慶を見上げる。見下ろす明慶の顔に朝日が当たってキラキラと輝いて見えた。 「――そうだった、柳ヶ瀬夫妻は怒らせると本当に怖い。全く、なんでああも  息の合ったペアが出来るんだろうな、不思議でならん。」 明慶もそう言いながら柔らかい笑みを浮かべている。 今日もお互いにこなさなければならい事が沢山待っている。 けれども、新しい案を胸に秘めている今は、そんな業務も気にならない。 オメガの為に新しい事を出来るのだから、こんなに嬉しい事はない。 「明慶様、僕は幸せです。あなたに出会えて、貴方に選んでもらえて。  僕の心はこうやってあなたで満たされていく、僕の心が満たされたら、  それが溢れてみんなの所に流れていく。そしたらみんなも同じように  幸せで満たされていく・・・。そうなるようにしたい。」 芙蓉は自分の胸に手を当て、目を閉じて呟くように話す。 明慶はその姿をじっと見ている。あまりにも美しいので見蕩れていると言ってもいいだろう。 「俺も同じだ。お前が俺のところに来てくれて、お前が俺を選んでくれた。  お前に触れる度に満たされていくし、お前の笑顔を見る度に愛しい気持ちが  溢れてくる。これがみんなの所に流れたら、同じように愛しい気持ちで   いっぱいになるだろう。」 自分達がお互いの事を思いやることが出来たなら、周りの人にも同じように接することができるようになる。 自分達の心を愛情でなみなみいっぱいにして、あふれ出た愛情を皆に流していこう。 いつも明慶への愛情で心をナミナミに―――― いつも芙蓉への愛情で心をナミナミに―――― ベットに横たわり、つないだ手にギュっと力を込めた時、いつもの様にドアがノックされる。 徹底抗戦したい気持ちをグッと堪えて、明慶と芙蓉は一緒に返事する。 「今行く。」 「はい、起きてます。」 朝日が差し込むこの部屋で2人は顔を見合わせ、唇同士を軽く当てると、繋いだ手を離さず、ドアを開ける。 今日も互いの心の愛情はナミナミいっぱいになっている。この溢れてしまう愛情をみんなに流せるように、今日を過ごそう。 みんながナミナミ愛情で満たされるように・・・。                     ――――おしまい――――
/265ページ

最初のコメントを投稿しよう!