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(……しかし、)
「……まあな。ことりはそうだろうな」
掴んだ腕をそのまま引っ張れば、細く軽い身体なんて簡単に手中。
(こういう事はキチンと教えておかないと)
囁き声で、甘さと警告を同時に与える。
「でも男は違う。馬鹿だからな。簡単に欲に傾くんだよ」
柔らかな尻尾を、くん、と引いた。
「だから“コレ”は……許す訳にはいかない」
「……っ!」
「分かったらほどく事」
「で、でも先生……今?」
暑いから嫌?
解くと何か困りごとが?
どちらにしろ、ことりは戸惑いを見せ瞳をこちらに向ける。「今日はいいでしょ?」少しばかり不満げな色だ。
もしかしたら、彼女はこの髪型を案外気に入ってるのかもしれない。いつもおろしてばかりのストレート。季節に合わせ変化をつけるのが、女子なりの楽しみというものなのか?
そういえば、去年の彼女を俺は知らない。彼女がどう過ごし、どんな髪型に遊んでいたのか……何も。
――そう思うと、腹の底が何とも言えず気持ち悪かった。
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