46人が本棚に入れています
本棚に追加
/13ページ
「嫌なのか?」
「嫌じゃない……けど……」
「ふぅん……?」
(困ってるくせに)
何故そこまで俺はムキになったのか。抱えた感情はあまりにも幼稚で……。口に出すのも恥ずかしい位だ。
相変わらず困惑を浮かべることりは、俺をじっと見上げていた。
――ここまでしても気付かないとは。なんとまあ、平和な。
無邪気で無自覚で、無垢。
彼女のそれは、近頃特に自分をかき乱す。
(大したもんだ。惚れ惚れするよ)
では、そこに敬意を表して、堂々と対抗するとしますか。
「せんせい?」
「分かった。……じゃあ、実力行使で」
「? うわ!?」
ほのり色気を晒すうなじに噛みつく様に唇を密着させ、肌に赤いあざを残した。甘い香りが鼻腔をくすぐり、すぐに離れる事を引き留める。
誘いに抗う事無く、もう一度同じ場所へ重ねる赤。
唇を離すとそこには見事に、薔薇の花さながらに所有の証が残っていた。
これだけあからさまなキスマーク。まさか万人の目に晒す訳にはいかないだろう。
満たされた想いから自然と笑みが漏れてしまった。
最初のコメントを投稿しよう!