エピローグ

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オレがここ『花火』に来るようになったのは、シゲに連れられてきたからだ。このバーのスタッフである涼音(すずね)さんという女性が、シゲとずっと同じピアノ教室に通っていた人で、今もずいぶん仲がいいらしい。 涼音さんはキーボーディストで、長い黒髪の物静かな美人。シゲには内緒だけど、ちょっと好み。でも、修羅バンドのファンらしい。趣向が意外過ぎる不思議な人だ。 オレがここを気に入ったのは、ライブハウスとは違う自由な雰囲気。その場の思いつきで、名前もわからない相手と「アレやろうぜ」とセッションすることもしばしばだ。 そして、酒を飲みながら、いろんな人と延々と音楽を語り合える。楽しくて仕方ない。 それにしても。ちょこちょこ顔を出していたら、ある日ひょっこり啓吾さんが現れたのだからびっくりだ。世間って狭い。 ちなみに『あんなこと』があってから半年後のこと。半年経ったとはいえ、さすがに気まずくて焦った。 でも、オレはどうやらユッキーと違って、啓吾さんに嫌われていなかったらしい。向こうから声をかけてくれて、バンドやベースの話で盛り上がり、すぐに打ち解けた。 聞けば、彼は毎週のようにここに来ているらしい。よく会わなかったもんだ。以来、啓吾さんと曜日を合わせて通うようになった。 そんなこんなで、そろそろ1年半か? 『あんなこと』からはもう2年が経ったのか。
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